日立製作所笠戸工場アスベスト被害訴訟
2019年10月9日、岐阜地方裁判所において、日立製作所笠戸工場で鉄道車両の配管の部品製作及び艤装(配管の取り付け)に従事し、鉄道車両に使用されていたアスベスト(石綿)にばく露したことにより、悪性胸膜中皮腫に罹患した元従業員男性Aさんの遺族3名(妻及び子2名)が日立製作所に対してアスベスト健康被害損害賠償訴訟を提訴しました。
2016年に労災認定されたAさんは懸命に療養していましたが、中皮腫の進行にともない病状は悪化していきました。2017年8月、会社と労災の補償について交渉することを決意したAさんはアスベストユニオンに加入しました。
ユニオンが日立製作所に団体交渉の開催を要求したところ、11月にAさんの自宅近くの自治体施設の会議室で団体交渉が開催されました。Aさんとユニオンの役員が団交会場に入室する直前、廊下で待ち構えていた日立製作所の担当者より会議室代を折半することを求められ、ユニオンは会議室代の半分を支払いました。ユニオンは多くの団交を行ってきましたがこういうことは初めてでした。
第一回団交における会社側回答は不十分でした。この団交終了後、Aさんはお亡くなりになりました。Aさんの死後、ユニオンは遺族とともに日立製作所に再度団交を要求しましたが、日立製作所側は組合員が死亡したことを理由に団交を拒否。団交の継続は困難になりました。遺族との交渉にも応じている鉄道車両製造会社もあることから、日立製作所の態度は紋切り型ですし、遺族の気持ちを踏みにじるものでした。この後、Aさんのお連れ合いとお子さん2名は日立製作所を相手取った損害賠償訴訟提訴の準備に入りました。
厚労省の労災認定等事業場の公表によると、笠戸工場におけるアスベスト健康被害による労災認定は33件です。この他にも、厚労省の過去の公表から笠戸工場の協力会社の弘木工業(株)における中皮腫の労災認定が1件と山本産業(株)での中皮腫3件と肺がん1件の労災認定が確認出来、笠戸工場におけるアスベスト健康被害が深刻な状況であることが分かります。
日立製作所は自社従業員や協力会社社員のアスベスト被害について認識し、誠意ある行動を取るべきです。
(アスベストユニオン執行委員 成田博厚)